「玄米菜食」はいいかげん(良い加減)に

「いいものばかり」とは

玄米菜食多くのがん患者さんが「玄米菜食」をしていると思います。
でも、あまり真面目にやらないほうがいいかも、と考えたことはないでしょうか。
玄米菜食とはどういうものか、一度ここで見直してみましょう。

以下話を進めるために、まず2つの言葉を定義しておきます。
「健康食」
「抗がん食」です。

「健康食」とは、健康を増進し、病気になるリスクを低めるための食事です。健康な人や老人・子供が行ってもまったく問題ありません。
「抗がん食」とは、 がんの患者さんががんと戦うため、食事を武器として行う治療です。薬や手術のように身体に負担をかけ、リスクがあります。

ゲルソン療法、星野式ゲルソン療法、済陽式食事療法、西式甲田療法、マクロビオティックなど(以下まとめて○○療法と言います)は、「抗がん食」に該当します。
驚かれるかも知れませんが、どの○○療法も、実は医学的に信頼できるデータがほとんどありません。
がんを予防するかどうか、がん患者さんを延命させるかどうか、医学の世界では報告されてないに等しいのです。

これら○○療法は「肉も魚も禁止」「野菜ジュースを1日何リットル飲むこと」「塩分はゼロに」など、とても極端な偏った食事を提唱します(戦いですから普通でないことをして当然です)。
しかし栄養に配慮すること無く、不用意にあれを食べるのを止め、これも止めてゆくと、必要な栄養が不足し、がんと戦う体力が失われます。
低栄養のがん患者さんは予後が良くないことが医学的に知られていますので、そうなっては本末転倒です。

健康食さて、その一方で、医学的に認められた「健康食」があります。

  • 野菜果物をたくさん食べる
  • 食物繊維をたくさん食べる
  • 肉や加工肉はあまり食べない
  • 肉よりも魚を多く食べる
  • 糖や炭水化物を食べ過ぎない
  • その他、タバコは吸わない、塩分やアルコールは摂り過ぎない、よく身体を動かす、太り過ぎないなど

上のような人はがんになるリスクが低く、がんになっても相対的に予後が良いことが分かってきました(がんに限らず、多くの病気のリスクが低減します)。
これらを見ると、○○療法による抗がん食を緩和にしたようなものであることがわかります。
そのため○○療法を行った人の中には(完璧に行わなかった結果、偶然に適切な水準で行うことができて)良い結果を得た人もいることが考えられます。
繰り返しますが、○○療法の極端で突出した部分には、医学の裏付けがないのです。

医学の世界でも食事の重要性が次第に理解されつつあり、いま3つの抗がん食が注目されています。それは「絶食」「カロリー制限食」「糖質制限食」です。

「絶食」とは、がん治療に合わせて絶食する方法です。抗がん剤や放射線の副作用を緩和し、治療効果を高めることが報告されています。
「カロリー制限食」とは、食事のカロリーを厳しく制限する食事法です。がんの増殖を抑制し、抗がん剤の効果を高めるなどの効果が報告されています。継続しにくいのが難点です。
「糖質制限食」とは、糖質(糖とデンプン)の摂取を厳しく制限する食事法で、ケトン食とも呼ばれます。がんを取り巻く微小環境が変わり、がん細胞の増殖を抑制することが実験的に確かめられています。いまてんかんと脳腫瘍に対する臨床試験が進んでいます。

○○療法の抗がん食を行っているつもりで、そうとは自覚せずに、結果的にカロリー制限食になっている可能性があります。
しかし当てずっぽうにこれを自己判断で行うのは、低栄養になるリスクが無視できないと私は思います。

健康食この3つの抗がん食の研究にはこれからも注目したいと思いますが、まだ飛びつくのは早い(自分をモルモットにするようなもの)と思います。
それより、自分ででき、安全で良い作用が期待できる「健康食」をしっかり行うことをお勧めします。
別の言い方をすれば、○○療法をいいかげんにやれば、ちょうど健康食くらいになります。
もしどうしても厳格な○○療法に踏み込んでみたいときは、リスクを十分に理解し、ベースサプリなどで栄養補充に配慮した上で、お医者さんの診察を定期的に受けながら行って下さい。

Dr.安西文責:安西英雄


「いいものばかり」とは